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ようこそ!市長室へ(新春座談会)コロナ禍での子どもとの接し方

更新日:2020年12月25日

 新春座談会

 新型コロナウイルス感染症の影響により、学校や家庭で起きているコミュニケーション上の問題について、可児市いじめ防止専門委員会特別顧問の尾木直樹さんに、市長と教育委員の小栗さんがお話を伺いました。

尾木直樹さん
教育評論家、法政大学名誉教授、臨床教育研究所「虹」所長。「尾木ママ」の愛称で親しまれ、多数の情報・バラエティー・教養番組のコメンテーターとして活躍している。平成24年(2012年)、可児市いじめ防止専門委員会の特別顧問に就任。

小栗照代さん
可児市教育委員会委員を務める。FMららのパーソナリティー、講師などでも活躍。久々利在住、大学生と高校生の3児の母。

コロナ禍の家庭で起きている問題

市長 尾木ママ、小栗さん、あけましておめでとうございます。

尾木ママ・小栗 あけましておめでとうございます。

市長 昨年は新型コロナによって私たちの生活が大きく変わり、学校の長期休校中、親も自宅でリモートワークをするなど、家族が家庭で過ごす時間がとても長くなりました。そのせいか、親子間でさまざまな問題が起きていると報告を受けています。

尾木ママ トラブルもありましたけど、親子の絆が強まったともよく聞きました。思春期で反抗する場面しか見ていなかったけど、親思いの場面だとか、我が子を丸ごと捉えることができたと喜ばれる方も多いですよね。
 トラブルで言いますと、普段は仕事で家にいないお父さんが、今はリモートワークで家にいるから、お母さんが3食分の食事を用意しなくてはいけないとか。それにお父さんが子どもに口を出してトラブルになって、その仲裁役は結局お母さんとか。ノイローゼ気味になっているお母さんもいたぐらいなんですよ。
 それから経済的な問題が子どもたちの進路や意欲にまで影響を与えてきているんですね。例えば大手企業で管理職をされているお父さんの給料が減って、中学3年生の月に数千円の教育費ですら削らざるを得なくなったそうです。高校3年生で大学進学を諦めた子もいます。
 それに子どもがSNSやゲーム、インターネットにはまってしまって、生活リズムが崩れたことが大きな問題となっています。また親子関係がぎくしゃくして、虐待の事案も急増しましたね。今後、長期休校期間などを迎えたとき、こういった問題をどう乗り切っていくのか、僕はすごく心配です。

小栗 わが家でもそうですけど、学校に行っていれば気付かなかった小さなことが積み重なって、最終的に強い言葉になってしまい、上手くコミュニケーションが取れなくなることがありました。

市長 尾木ママがよく使われる「どうしたの?」という魔法の言葉があるんですけど、ピンチのときにお互い冷静さを取り戻せる、何かいいアイデアはありませんか。

尾木ママ 「どうしたの?」っていう言葉は親に余裕があるときには言えるんですが、親も収入が激減してくるとなかなか余裕が持てなくなってしまいますよね。僕はそういう時、お母さん方に言っているんですけど、愚痴とか不安を子どもと共有していいと思うんですよ。パートナーシップっていう言葉をよく使うんですけど、お母さんが子どもに頼るというか、子どもと対等になって一緒に考えていくことも、重要だと思います。

市長 子どもだからとガードするんじゃなくて、親子だから頼ったり頼られたり、親子で共有してなんでも話すことが大切ですね。

尾木ママ そうですね。14世紀のペストの時は大変でしたけれども、こんな世界的な大流行にはなりにくかったですよね、飛行機も飛んでいないし物や人の移動も今よりずっと少ない。そういう点でいえばこのコロナは人類史に残る大きな出来事だと思うんです。だから人類はこれまで感染症の恐怖とどう闘ってきたんだろうとか、親子で情報を集めてみることも重要だと思います。世界中同時に同じ状況にあるわけですから、国それぞれの対応を比べてみてもいいかもしれませんね。


子どもたちの心と身体をどう守っていくか

市長 ネットやゲームで生活が不規則になっています。身体だけでなくメンタルでも健康を害することがありますよね。

尾木ママ ネット依存、正確にはゲーム依存症って言いますけど、2019年5月にWHO(世界保健機関)がゲーム障害は病気だと認定しました。休日なんて1日6時間以上もスマホを見続ける子も珍しくないんですけど、これはスマホに依存してしまっているからなんです。薬物依存と似ていて、科学的には脳からドーパミンが大量に放出しっぱなしになるんです。脳の前頭前野っていう、感情や思考力とかをコントロールする大事な部分の機能が低下するんですよ。それで子どもが暴言を吐いたりするのね。これは脳の変化なんです。だから家庭や学校でも、ネット依存は自分で自分をコントロールできなくなる、ということを教えるべきだと思うんです。低年齢の子どものスマホ利用もこの休校中に広がりました。これはコロナ禍で親が子どもに甘くなってしまって、ルールを作らないでスマホを与えた結果なんですよ。

 今ちょっと耳が痛いなって思いながらお聞きしてました。やはりルールは必要だとあらためて思います。

尾木ママ それから、2020年の4月から改正児童虐待防止法が施行されましたけど、このニュースがコロナに紛れて少しも流れてこない状況になっちゃったんです。でも本当は重大なことです。親が子どもに口で3回言っても、言うこと聞かないからほっぺを叩いたって体罰です。それから「ちょっとそこに座ってなさい」って言って正座を長時間やらせるとか、暴言を吐くとか、これらが全て法律違反になったんですよ。子どもの人権をどう尊重するのかという大切なことが、皆さんに伝わっていないと感じます。


コロナ禍での小中学校では

市長 学校が休校だった分、先生方も授業をカバーしなくちゃいけないし、修学旅行などの行事予定が狂って悩んでいると思います。


尾木ママ
 先生方も本当に大変ですよね。小学校ですと、多くの地域で45分授業を40分にして、さらに1日6時間授業から7時間に増やしているんです。うちの近隣でも小学生が薄暗くなる5時半くらいに下校してきて、その姿を見るだけで僕、涙が出てくるんです。でも先生方も大変だと思うんですね。給食の対応や教室の換気、子どもの下校後ドアから机から全部消毒されています。仕事が膨大に増えて、授業の時間が増加しただけではなくて、授業のスピードも上がっているんですよ。しかもマスクで子どもの表情も読めないとかね。そういう中で、先生方の苦労は並大抵じゃないと思います。
小栗 教育委員として市内の学校をいくつか回らせていただきました。校長先生にお話を伺うと、やはり先生方も消毒をはじめいろいろと神経を使っていて、過敏になっている子どもたちもいるということで、先生方の負担が大きくて大変という印象はあります。

市長 コロナ対策で、小中学校のデジタル化と併せて、国は先生の負担を減らすため学習指導員の配置を推進しました。可児市も補助金をいただいて先生に代わって消毒をする方を雇いましたが、評判はいいですね。
小栗 以前校長先生から、消毒などしていただける人をお願いしたいとお話があり、市に依頼したところ、すぐに対応していただきました。学校からも本当に感謝されています。


尾木ママ
 これはすごいですよ。そんなにすぐ動かれたのは、僕が聞いているところでは少しのケースしかないの。先生方も支えられてるって思いが元気の源になりますからね。

市長 先生方にはできるだけ子どもたちと向き合ってもらうために、負担を少しでも減らすことが私の大事な役割だと思います。


尾木ママ
 先生方にとって子どもたちの心のケアは大切だし、本当は授業にもっと集中したいんです。それとオンラインの整備が早く進むといいですね。そうしたらコロナ禍にあっても即対応できますし、オンラインが授業の単なる代替品だけじゃなくて、アフターコロナ時代の今後の一つの方向性となる、そんな展望もあるんじゃないかという気がします。
市長 そうですね。オンライン授業は私立の学校では進んでいますね。可児市の公立の小中学校でも1人1タブレット、家庭とのネットワーク、それから授業で使うためのプロジェクターやモニターの整備を現在進めていますので、あとは先生方がどう活用して授業を作っていくかというところが重要なポイントですね。

尾木ママ これはね、「習うより慣れろ」だと僕は思いますね。先生も最初はうまくできなくて大丈夫なんですよ。今の子どもたちは、本能的にそういうものに慣れているんです。だから大胆に始めることが大事ですね。


尾木ママから可児市の皆さんへ

市長 最後に今年もコロナの終わりが見えない状況が続くと思います。その中で可児市民に対して、尾木ママからメッセージをお願いします。


尾木ママ
 こんな経験は僕も生まれて初めてだし、全世界が同じ災禍に見舞われています。感染防止はもちろんアフターコロナ、あるいはウィズコロナ時代をどう生き延びていくのかっていうのも喫緊の課題なんですよね。ですから、今後は社会活動から経済、文化においても全面的に根本的に問い直されていくと思います。学歴よりも「学習歴」、何を学び何ができるのか、ということが重要になります。それにソーシャルディスタンスをとりながらも、心のつながりはしっかりと結んでいることが重要ですね。そういう面では、私たち高齢者含め大人の経験を生かしながら子どもたちの若いユニークな発想と合わせて、未来志向に立ってこのピンチを逆に進歩へのバネにすることが大切です。
 可児市には素晴らしいところがいっぱいありますけど、※フロントランナーとしてさらにそれを発展させることを可児市の皆さんに期待しています。

小栗 私自身、下の子がもう高校生ですけどまだまだ親として学ぶことが多く、今日は大変勉強になりました。

市長 こういうオンラインも新鮮ですけど、やっぱりまたお会いしたいですね。今日は本当にありがとうございました。

尾木ママ・小栗 ありがとうございました。

  

※フロントランナー = 先頭を走る人、リードする人

添付ファイル

コロナ禍での子どもとの接し方(pdf 1431KB)