更新日:2018年5月24日
キツネとタヌキの相談
むかし、むかしのこっちゃ。
このあたりには、ようけキツネとタヌキがおってな。道ゆく人を化かしたり、いろんな悪さをして困ったものやった。
あれは、寒い寒い冬の日のことや。キツネがタヌキに、
「こう寒てはかなわん。あぶらげのたあんとはいったあったかい汁でも飲んで、ごっつおうでもうんとたべたいな。」
と、いうた。
「けど、ごっつおう買う金もないしなあ。」
キツネとタヌキは、しばらく、考えこんでいたそうじゃ。
「そうや、いいことがある。どうじゃタヌキ・・。おれが死んだふりをするでな。おまえ、おれをかついで売りにいってこいよ。」
「けど、どこへいったら、買ってくれるやろうかな。」
「あそこの山のふもとのお寺がいい。あそこのおしょうは、なまぐさ坊主だちゅうこっちゃ。たいてい買ってくれるに。」
「よっしゃ。」
というわけで、話がまとまるとすぐ、タヌキは、じょうずに人間に化け、キツネをかついで、いそいそとお寺の石段を、のぼっていったそうや。
「おしょうさま、おしょうさま。大きなキツネは、どうですな。安くしておきますに。買やあへんかなあ。」
と、人間に化けたタヌキにいわれて、おしょうさまは、
「ほお、これはめずらしい。」
と、たあんとお金をだして買っておくれたのじゃ。
タヌキは、お金を受けとり、ふかくおじぎをするやいなや、石段をいちもくさんに、走って走って、町へいった。
そうして、あれもこれもと、うまそうなものを、いっぱい買いこんで、帰ってきたのじゃ。
それからごっつおうをたあんとつくって、キツネが逃げて帰ってくるのをまっとったげな。
いっぽう、おしょうさまに買われたキツネじゃがの。
死んだふりをしていたが、おしょうさまが、ちょっと裏庭にでられたスキに、
「それっ、いまじゃ!」
と、キツネは、うしろもみずに、いちもくさんに、タヌキのところへ、ころげこんできたそうな。
ひさしぶりに、キツネとタヌキは、寒さを忘れて、うまいごっつおうに、したつづみをうったそうなわ。
それから、二、三日したある日。
この間の味がわすれられずに、またキツネとタヌキは、相談をしはじめたのや。キツネが、
「こんどは、タヌキ。おまえが死んだふりをせよ。おれが売りに
ゆくで。」
と、こうたいをしたのじゃ。
「おしょうさま、おしょうさま。きょうはタヌキは、どうやな。よおくこえとるんな。」
「どれ、どれ。こりゃあ、よおくこえとるわ。うまそうやな。」
と、またまた、おしょうさまは、気いよう買っておくれたそうな。
キツネは、お金をもらうやいなや、とび帰って、ごっつおうをつくって、あぶらげ汁も、うまそうにできあがった。
ところが、いくら待っても、タヌキが帰ってこんので、キツネはそうっとお寺へみにいったげな。
そうしたら、タヌキは、うら山の、カキの木にしばりつけられて、泣きながらこういった。
「小僧のやつが、このあいだのキツネは、逃げてまったで、こんどはにがさんぞと、ぐるぐるまきにされて、これ、このとおりじゃ。」
そこでキツネは、
「そうか・・。そんなら、今夜のごっつおうは、おれがひとりで食っちまうさ。おまえは、気のどくじゃが、お寺のタヌキ汁にでもなるか!」
と、いいすてて、帰ってしまったそうな。
キツネの方が、ちいと、かしこいといっても、これでいいもんやろかのう。