更新日:2012年12月4日
芸術のパワースポット
日本が世界に誇る総合芸術「茶の湯」の文化。茶室、庭園、書画、生け花、茶器、和菓子、そして装い、作法など、さまざまな日本芸術が、見事な調和を見せてくれます。安土桃山時代、この文化の確立に向けて大きな役割を担ったのが、黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部といった、400年以上も前に可児市で焼かれていた茶陶の名品です。
これらの茶陶は瀬戸で焼かれていたという、それまでの定説を覆したのが、人間国宝で、可児市名誉市民でもある荒川豊蔵氏です。氏が、久々利大萱で発見した陶片は、歴史に残る世紀の大発見となりました。和物の茶碗で日本の国宝となっているのは二つだけですが、その一つ「卯花墻」は、可児市大萱の牟田洞窯で焼かれたものといわれています。大平・大萱地区が、「美濃桃山陶の聖地」とされる由縁です。
豊蔵氏が収集した書画や国内外の古陶磁器、自作の茶陶、皿や鉢など、貴重な芸術品が収蔵公開されている「豊蔵資料館」。この度、9億円を超えると評価されている収蔵品を、土地建物と併せて、可児市にご寄付いただくことになりました。
この地は、400年前に国宝を生み出した窯跡を含め、当時、第一級の芸術活動がされていた空気を感じることのできる、貴重な「景色」を今に伝えています。さらに、この地は今なお、多くの芸術家を集めるパワーを感じさせます。人間国宝の加藤孝造氏をはじめ、多くの陶芸家が活動されています。陶芸家以外でも、自然と人との共生モニュメント「丘」を制作いただいた、日本を代表する彫刻家神戸峰男氏も、この地に移り住んで芸術作品を生み出しておられます。種痘や雌しべ、雄しべ、花粉の命名でも有名な理学博士伊藤圭介、母子手帳の先駆けとなる「ベビーブック」出版で活躍された海老衣子、サクライソウの研究で著名な加藤新市、勤皇の志士西山謙之助など、日本の近現代史に名を残す多くの人物も、久々利の地にゆかりがあります。
「美濃桃山陶の聖地」は、同時に長い歴史を経て今に続く、「芸術のパワースポット」なのかも知れません。私は、この地を多くの方々が訪れ、その力を感じていただける場所にしていきたいと願っています。
市長 冨田成輝
昭和5年、荒川氏が大萱で発見した筍絵陶片
人間国宝 加藤孝造氏
400年のパワーを感じる牟田洞窯跡地
添付ファイル