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平成27・28年度 弥七田古窯跡発掘調査

更新日:2018年6月28日

調査目的

 県指定史跡 大萱古窯跡群のひとつである弥七田古窯跡は、平成27年度の調査により2基の窯跡(いずれも連房式登窯)が確認されました。平成28年度では、前年度に確認されたそれぞれの窯の構造等を調べる調査を行いました。


調査結果

1号窯

1号窯調査写真1
1号窯の焼成室の第4室(上から)

1号窯調査写真2
1号窯の焼成室の第4室(正面から)

 1号窯は、岩盤を掘り凹むことによって半地下式の床面を造り、その上から粘土を貼り、焼成室としています。推定長は20.6mで、焚口、煙道部は未検出です。今回の調査では、燃焼室が1室、焼成室が9室あることが確認されました。その中で、第4室はすべてを調査し、規模も下記の表のとおり判明しました。

1号窯

長さ(m)

幅(m)

床面傾斜

燃焼室

(1.7)

(2.7)

14~15°

第1室

(1.6)

(2.7)

第2室

(1.6)

(2.8)

第3室

(1.6)

(2.6)

約30°

第4室

1.7

2.95

20~25°

第5室

1.5

(2.5)

25~27°

第6室

1.6

(2.4)

20~25°

第7室

1.7

(2.4)

20~25°

第8室

1.8

2.5

約30°

第9室

1.6

(2.5)

20~24°

 1号窯はそれぞれの部屋に隔壁は検出されておらず、狭間構造をもたない窯で、規則性が見られない、6~7本の天井支柱によって部屋が区切られていることが確認されました。天井支柱には、写真で一部確認いただけるように、円形、角形、三日月形の匣鉢や角形の粘土ブロックが使用されています。

2号窯

1号窯の燃焼室と2号窯の焼成室の写真
1号窯の燃焼室(左)と2号窯の焼成室(右)

 2号窯は、1号窯の天井や壁が崩落した層の上に、軸を変えて造られていることがわかりました。しかし遺構は現地表面に近く、窯体の多くは滅失しています。残存長は約8.5mあり、5部屋あることが確認されました。検出状況から、隔壁を有していたかどうかは不明ですが、焼成室後方の支柱や段差の関係から、狭間構造を有していた可能性があることがわかりました。そのほか、床面を改修したり、窯の規模をを途中で縮小していることも確認されました。
2号窯

長さ(m)

幅(m)

床面傾斜

第1部屋

不明

不明

第2部屋

(1.9)

(2.1)

第3部屋

(2.6)

(2.0)

24~25°

第4部屋

(1.8)

(2.1)

約22°

第5部屋

(1.6)

(2.2)

約15°



遺物

鉄釉の後に灰釉をかけた天目茶碗の画像
鉄釉の後に灰釉をかけた天目茶碗

長石釉鉄絵丸皿の画像
長石釉鉄絵丸皿

 今回の調査では、窯道具を除くと約9,000点もの遺物が出土しました。その中で碗類は約93%を占めます。出土した製品の中には鉄釉の後に灰釉をかけたり、長石釉の後に銅緑釉をかけるなど2つの釉薬を使用するほか、高台まで釉薬をかけたものあり、「一手間加えた高級志向」の製品を目指した印象を受けます。また出土した碗類の一部には、岐阜県瑞浪市に所在する田ノ尻古窯跡群や大川東窯跡群との共通性が見られました。

使用された窯道具の画像
使用された窯道具

線刻のある窯道具
線刻のある窯道具

 出土した窯道具の中には、匣鉢や焼台に、同じ大萱古窯跡群の牟田洞古窯跡、大萱窯下古窯跡と共通した窯記号が入ったものが見られます。また今回の調査では、草花文がヘラで線刻された、非常に珍しいエブタ(匣鉢の蓋)が出土しました。