更新日:2019年2月25日
平成31年度(2019年度) 施政方針
平成31年度当初予算案をはじめとする、諸議案のご審議をお願いするにあたり、私の市政運営に関する所信を申し述べ、市民の皆様、並びに議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。
平成31年度(2019年度)の基本方針
我が国は、2008年(平成20年)の1億2,808万人をピークに人口減少社会に突入し、これまでに経験したことのない高齢化、少子化、人口減少、コミュニティの希薄化等が急激に進む、いわゆる「ネクストステージ」を迎えています。これは、明治維新や先の敗戦に匹敵する程の大きな時代の転換とも言われています。
国の推計によると、2015年(平成27年)国勢調査による日本の人口は1億2,709万人であったものが、2053年には1億人を割り、2015年から50年後の2065年では8,808万人まで減少すると推計されています。また、65歳以上の老年人口割合、いわゆる高齢化率は、2015年では26.6%であったものが、2065年には38.4%に増加すると推計されています。さらに、0歳から14歳までの年少人口割合は、2015年では12.5%であったものが、2065年には10.2%に減少すると推計されています。
このような中にありながらも、本市では人口が増え、本年2月1日現在で10万2,197人になり、過去最高であった2008年(平成20年)10月の10万3,538人に近づいてまいりました。しかし、市外への転出状況を日本人だけに限って見てみると、本市の昨年4月1日の人口に対する市外転出者の割合は、全世代の平均では3.4%でした。その中で、若い世代の市外転出の割合を見てみると、20歳代で12.7%、30歳代で7.2%という高い割合となっています。
一方、本市の外国籍市民の人口は、リーマンショック以後、最も少なかった2014年(平成26年)1月の5,165人から、本年2月では7,456人となり、44.4%増加しています。これは本市の全人口の7.3%を占めており、市の人口に占める外国籍市民の割合としては過去最高になります。また、外国籍市民全体のうち、21.9%が20歳代、22.7%が30歳代です。このようなことからも、外国籍市民の転入は可児市の人口増加の大きな要因であると言えます。
さらに、昨年12月には、出入国管理及び難民認定法が改正され、本年4月以降には、一層多くの外国籍の方が転入してくることが予想されます。本市はこれまで多文化共生に取り組んでおり、外国籍市民の対応には実績がありますが、より多様な外国籍の方の転入が見込まれることから、多言語に対応した相談窓口、小中学校等の教育、災害時の対応等、多岐にわたる対策が必要になってきます。すべての市民の皆様が安心して暮らしていただけるような仕組みをつくる等の新たな課題への対応が求められます。
本市の財政状況は、企業誘致の成功や現在景気が上向きで投資も盛んであることから、法人市民税や固定資産税は伸びており、健全な状態を維持しています。しかし、今後は、高齢化による納税者の減少で個人市民税が減ることもあり、市税収入の大幅な増加は見込めません。さらに高齢化に伴う社会保障経費の増加や小中学校、文化創造センターの大規模改修に取り掛かっていかなければならず、その他にも、築後30年を経過する各地区センター等の大規模改修の課題があり、今後大きな負担となってきます。2016年度(平成28年度)に策定した可児市公共施設等マネジメント基本計画では、すべての市の施設の建替や改修等を行うと、市の財政は2063年度に331億円の累積不足となる見込みになっています。
一方で大きなチャンスもあります。本年は、本市で全国山城サミットを開催します。また、来年には本市で生まれた明智光秀が主人公のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」が放送されます。これは、今まで取り組んできた本市の観光交流の魅力を全国に発信できる絶好の機会であります。本市を知ってもらい、本市に来ていただければ、交流人口の増加に結び付くことになりますし、新たに住んでいただける方が増えてくることも期待されます。また、市外の方ばかりでなく、市民の皆様にも、情報をしっかり伝えることで、改めて可児の魅力を再認識してもらい、可児市に住んでよかった、これからも住み続けたいと思っていただけるのではないかと考えております。
本年はもとより、来年や再来年以降も多くの皆様に本市を訪れていただき、経済効果に結びつく契機とするという観点で取り組んでまいります。
このように、今後は、厳しい財政状況にあっても、大きな財政負担が必要になってくるステージを迎えます。今どうしても必要なものや将来の収入に繋がる投資を進めると同時に、その財源を捻出するために何を削っていくのかという取捨選択が必要となります。まさに今までとは大きく異なるステージに立っているという基本認識を持った市政運営が求められています。
以上のことから、平成31年度の可児市一般会計予算案は、前年度比12億3,000万円、3.8%減の314億5,000万円としました。特別会計及び企業会計を合わせた予算総額は、前年度比約11億8,000万円、2.0%減の約590億4,000万円となります。
高齢者の安気づくり
「団塊の世代」の方たちがいよいよ70歳を超えてきており、じきに80歳代、90歳代となっていきます。本市の高齢化率は、市全体で26.8%ですが、一部の地域では40%を超えているところもあります。今は元気な方々も、この先は今以上に介護や在宅医療、生活支援等の対応を迫られる時代を迎えることになります。
本市では、高齢になっても住み慣れた地域で暮らし続けられるように医療、介護、生活支援を一体的に切れ目なく提供することを目指し、地域包括ケアシステムの構築に取り組んできましたが、今後はさらなる充実と推進を図っていかなければなりません。この地域包括ケアシステムを補完し、高齢者を孤立させない仕組みをつくってまいります。そして、高齢者が行政や地域とつながりを持つことで、孤立感を減らし、安心していつまでも住み慣れた地域で生活できるまちづくりを、民生児童委員の皆様をはじめ、支え合いに協力していただいている多くの市民の皆様とともに進めてまいります。
子育て世代の安心づくり
幼児教育の無償化については、国の「新しい経済政策パッケージ」及び「経済財政運営と改革の基本方針2018」において方針が示され、本年10月1日の実施に向け準備されているところです。今まで本市が独自に行ってきた幼児保育や教育支援も含めて、大きな変更を求められることになります。未だ不明の部分もありますが、しっかり対応してまいりたいと考えております。あわせて、保育ニーズの増加や多様化に対応したサービス等を充実していきます。
昨年5月には、待望の子育て健康プラザ「マーノ」がオープンしました。マーノは、マイナス10カ月からの子育て支援の拠点です。ここを中心に、母子の健康増進や支援を要する子育て家庭の早期把握等、関係機関が連携して適切かつ切れ目ない子育て支援を引き続き行っていくとともに、市民ボランティアや支援団体等の皆様の活動を支援していきます。
小中学校においては、小学校低学年児童用トイレの洋式化を完了させ、蘇南中学校校舎大規模改造工事に向け準備を進めるなど、安心して学べる教育環境の整備充実を図り、子どもたちが生き生きと育つ「笑顔の学校」づくりを推進していきます。
地域・経済の元気づくり
昨年12月時点のハローワーク多治見管内の一般の有効求人倍率は2.21倍で2倍を超えました。このことは、厳しい働き手不足の状況になっていることを物語っています。本市に住む若者が地元企業のことをよく知り、就職先の選択肢として考える機会をつくり、地元で働き、地元で暮らしていただけるように、「可児わくわくWorkプロジェクト」をより一層推進していきます。
また、本市は可児工業団地をはじめとして、二野地区と柿田地区に工業団地を有しており、製造業を中心に発展してきました。さらなる将来への投資として、東海環状自動車道可児御嵩インターチェンジ隣接地に優良な企業を誘致し、積極的な産業振興を図り、今後の税収確保を目指して、まずは調査等から進めてまいります。
長年手をつけられなかった昭和58年の豪雨災害対策の仕上げの意味も有する土田渡多目的広場については、2020年度の完成をめざし、整備を進めてまいります。
先ほども申し上げましたとおり、来年1月からNHKで放送される大河ドラマ「麒麟がくる」では、本市で生まれた明智光秀が取り上げられます。これにあわせ、「明智光秀生誕の地 可児」をより多くの方に知っていただけるよう、花フェスタ記念公園に大河ドラマ館をオープンするよう準備を進めてまいります。また、本年11月には、全国山城サミット可児大会を開催します。本市の貴重な歴史資産である山城を、もっともっと市民の皆様に、ふるさとの自慢、誇りとして認識していただき、市外からも多くの方にお越しいただくなど、本市の魅力を全国に発信する絶好の機会となるよう取り組んでまいります。
まちの安全づくり
昨年は、災害とも言える猛暑日が続き、大きな台風や大雨も何度もありました。幸いにも可児市では大きな被害はありませんでしたが、今後どのような災害が起こるかわかりません。南海トラフ地震もいつ起きてもおかしくありません。このような災害に対応するため、昨年は、市民も一緒になった大規模な防災訓練を行いました。こういった訓練や過去の災害の教訓を活かしていくとともに、急傾斜地の崩壊対策や河川整備、上水道施設の耐震化や下水道施設の改築等を進め、引き続き市民生活の安全性の確保と防災対策にしっかり取り組んでまいります。
さらに、障がいのある方やその家族の皆様に対する自立支援や生活支援、人権問題や子どものいじめの防止及び対処等を引き続き実施してまいります。
また、これらを支えていただいている多くのボランティアや関係団体の皆様には大変感謝申し上げるとともに、市としてもできる限りの支援をさせていただきたいと思います。
多くの皆様のご協力を賜りながら、市民の皆様が安心して暮らせるよう取り組んでまいります。
むすび
本年4月には、いよいよ岐阜医療科学大学可児キャンパスが開校します。まずは看護学部の学生が学び始め、来年には薬学部も開設され、学生も増えてきます。地域医療を支える多くの人材がこの地域から輩出され、少しでも多くの人材が本市で活躍してくれることを期待し、大学との連携をより一層進めてまいります。
これからは観光、企業誘致、大学開設等により、本市に多くの人が集まってまいります。これを一過性で終わらせることなく、様々な展開を仕掛けていかなければなりません。
「平成」も4月で終わり、新しい時代を迎えます。本市では、新しい時代の始まりから厳しい状況ではありますが、将来に向けての期待も高まってまいります。これから現総合計画に替わる「(仮称)可児市政経営計画」策定の議論に入ります。本市の現状をしっかり踏まえたうえで、将来を見据え、取捨選択を行い、現世代の生活を守り、次世代に負担をかけない財政基盤のもと、持続可能な「住みごこち一番・可児」の実現に向けて取り組んでまいります。
添付ファイル
・平成31年度 施政方針