更新日:2025年2月26日
令和7年度 施政方針
令和7年度当初予算案をはじめとする、諸議案のご審議をお願いするにあたり、私の市政運営に関する所信を申し述べ、市民の皆様、並びに議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。
令和7年度の基本方針
現在、我が国は、頻発する自然災害や、地球温暖化をはじめとした気候変動、さらには引き続く物価高騰の影響など、一朝一夕には解決し得ない様々な課題に直面しています。このような状況ではあるものの、経済面においては、株価や企業の設備投資が堅調に推移しており、昨年の春季労使交渉において1991年以来33年ぶりに高水準の賃上げとなり、6月の毎月勤労統計調査では実質賃金が27カ月ぶりにプラスに転じました。その一方で、人口減少や高齢化は確実に進行しています。我が国の昨年9月時点の総人口は、前年に比べ59万人減少した一方、65歳以上の推計人口は前年比2万人増の3,625万人と過去最多となり、総人口に占める割合も29.3%とこちらも過去最高となりました。
人口減少、高齢化の進展は、働き手や担い手の不足による地域経済の縮小、地域のサービスや文化の衰退、空家・空店舗の増加、地域コミュニティの機能低下など、様々な弊害を生み、生活の利便性や地域の魅力の低下へと繋がっていきます。そして、これがさらなる人口の減少に繋がり、衰退を引き起こすという負のスパイラルへ陥る恐れがあります。
こうした状況の中、国におきましては、地域の力を結集して課題解決や魅力向上に取り組む地方創生の推進を重点施策とし、石破内閣が掲げる「地方創生2.0」の取り組みについて議論を進めており、昨年末には、その基本的な考え方として、「東京一極集中をさらに進めるような政策の見直し」や「地域の経済・社会・人材の力を最大限に引き出す政策の強化」などに取り組んでいくことが示されています。こうした取り組みは、地方におきましても、その創意工夫により、「若者や女性にも選ばれるまち」、「高齢者も含め誰もが安心して住み続けられるまち」を目指し、地域の魅力向上に資する取り組みを着実に進めていく必要があります。
本市では、昨年4月から新たな市政経営計画をスタートさせ、「住みごこち一番・可児~すこやかに、にぎやかに、おだやかに暮らせるまち~」を目指す将来像に据え、「高齢者の安気づくり」、「子どもの笑顔と子育て世代の安心づくり」、「地域・経済の元気づくり」、「まちの安全づくり」の4つの重点方針を定めて取り組みを進めています。
昨年実施した市民アンケート調査では、本市に「ずっと住みたい」・「住み続けても良い」と回答された方や、本市に「愛着がある」・「どちらかといえば愛着がある」と回答された方が、ともに8割を超えるという高い評価をいただきました。しかしながら、こうしたアンケート結果に満足することなく「住みごこち・一番」の実現に向けた歩みをさらに進めていかなければなりません。
人口減少や高齢化といった課題は、本市においても例外ではなく、兼山町との合併により10万人を超えた本市の人口は、昨年4月に19年ぶりに10万人を割りました。また、市の人口推計を見ましても、2040年には今より9,000人程度人口が減少する推計となっており、その内訳では、0歳から14歳までの年少人口と、15歳から64歳までの生産年齢人口が大きく減少するのに対して、65歳以上の老年人口は増加する見込みとなっています。
こうした働く世代の減少により、地方税収は減少していくことが予想されますが、これに加え、今後、国においては、いわゆる「103万円の壁」の見直しや「ガソリンの暫定税率」の廃止などの議論が進められていく見込みです。昨年末に閣議決定された税制改正大綱では、心配していたほど地方に大きな影響や負担はない方向が示されましたが、「103万円の壁」の見直しについては、仮にこれが178万円に引き上げられれば、人口10万人規模の自治体では20億円程度の地方財源の減収が見込まれることになります。しかし、現時点においては、これに対する国による補填などの対応方針は示されておらず、将来の財源については不透明な状況にあります。
このような状況の中にあっても、将来に渡って持続可能なまちであり続けるためには、民間企業や各種団体などとの連携、DX・GXの推進、時代の変化に合わせた組織体制・働き方の見直しといった新たな取り組みを積極的に進めながら、市政経営計画に基づく施策をさらに展開し、「住みごこち一番・可児」に向けた本市の魅力の磨き上げに引き続き取り組んでいく必要があります。
令和7年度は、市政経営計画に関する取り組みをさらに発展させ、推進していく重要な年となります。令和7年度の可児市一般会計予算案は、前年度比35億9,000万円、10.3%増の385億3,000万円としました。処遇改善に伴う職員人件費の増加、対象者拡大による児童手当の増加などにより義務的経費が増加したことや、物価高騰に伴い委託費などが増加したこと、市民ニーズなどに対応した公共施設やインフラ改修により投資的経費が増加したことが増加の主な要因となっています。また、特別会計及び企業会計を合わせた予算総額は、前年度比43億1,580万円、6.9%増の671億6,440万円となります。
高齢者の安気づくり
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には、32道府県で65歳以上の一人暮らし世帯の割合が全世帯の20%を超えると推計されています。岐阜県においても2020年に12.1%であった割合が2050年には19.9%まで上昇すると推計されています。こうした一人暮らしの高齢者の増加に加え、家族関係の希薄化に伴う高齢者の孤立が課題となっており、民生委員・児童委員による高齢者などの見守り活動の重要性はますます高まっています。しかし、これに比例して委員の負担も増加しており、近年、委員の担い手確保が難しくなってきています。これに対して、委員へのアンケート調査を実施し、委員活動におけるやりがいや課題などを整理しながら、委員の担い手確保に向けた検討を進めます。
我が国の65歳以上の就業者数は20年連続で増加しており、2023年は914万人と過去最多となりました。また、15歳以上の就業者総数に占める65歳以上の就業者の割合は13.5%となり、就業者のおよそ7人に1人が65歳以上の高齢者となっています。高齢者の就業は、収入の安定のみならず、暮らしの生きがいに繋がるものであり、生産年齢人口が減少していく見込みにおいては、地方財源の確保という面でも、持続可能な市政運営における重要な要素であるといえます。こうした就労に限らず、高齢者がいつまでも主体的に活動を行っていくためには、まずは心身の健康が前提となります。健(検)診項目の拡充や健(検)診費用の負担軽減、公民連携によるまちかど運動教室の効果測定などの取り組みを通して、高齢者をはじめ市民の皆様の健康づくりを支援してまいります。
また、高齢者が今後も住み慣れた地域で安心して暮らしていくためには、通院、買い物といった日常生活に関する支援も継続して実施していく必要があります。本年度から実施しております高齢者の移動支援を行う団体に対する車両の無償リースについては、その効果や課題を整理しながら、地域のニーズに応じた展開を支援するとともに、さつきバスについても運行管理システムを導入するなど、利便性向上に努め、高齢者や障がいのある方にも配慮した、誰もが利用しやすい移動手段として運用できるよう検討してまいります。
子どもの笑顔と子育て世代の安心づくり
本市の子ども・子育てに関する施策につきましては、現在、策定を進めている第3期可児市子ども・子育て支援事業計画を含め、市政経営計画の重点方針である「子どもの笑顔と子育て世代の安心づくり」に基づいて、こども基本法の基本理念とも整合性を図りながら展開してまいります。
子どもたちの笑顔に繋がる取り組みとして、子どもの居場所の充実を図るため、帷子と桜ケ丘の児童センターに新たな遊具を設置して遊び場の環境整備を図ります。また、子どもたちの学びの場である学校環境の充実のため、小中学校のトイレの洋式化や校舎の長寿命化を引き続き進めるとともに、バリアフリー化推進のため、桜ケ丘小学校と広陵中学校にエレベーターを設置します。これに加え、小中学校体育館への空調設置についても、個別施設計画の改訂に合わせて検討を進めてまいります。そして、教育環境の充実という面においては、ICTを活用した子どもたちの主体的な学びを効果的に推進するため、児童生徒が利用するタブレット端末をより汎用性の高い新たな機種に更新します。
不登校や外国籍の子どもたちに関する支援も引き続き進めてまいります。文部科学省が昨年発表した調査結果では、全国の不登校児童生徒数は過去最多となり、岐阜県の小中高校においても8年連続で過去最多を記録している状況です。本市でも不登校児童生徒数は増加傾向にあり、個々に応じた支援の必要性はさらに高まっています。本市では、老人福祉センター可児川苑内に開設しているスマイリングルーム、総合会館内に開設しているニコニコルーム、インターネット上の仮想空間に開設しているメタバースのスマイリングルームを活用し、それぞれの機能に応じた子どもたちへの多様な学びの場の提供や必要な支援を実施していますが、これらに加え、自分のクラスに入れないときや、少し気持ちを落ち着かせてリラックスしたいときなどに利用できる学校内の居場所として整備した校内教育支援センターにおいても、児童生徒のペースに合わせた学習支援や相談などを実施し、こうした子どもたちへの支援を強化します。
外国籍市民の人口は過去最多を更新し続けており、外国籍児童生徒数も増加しています。外国籍児童生徒に対する必要な支援を継続して実施するとともに、就学前の子どもたちについても、スムーズに日本の義務教育へ移行できるよう、その準備指導を行う教室の実施期間の拡大や支援員の増員などにより、支援体制の強化を図ります。
保育に対する取り組みとしては、高まる保育ニーズに対する受け入れ体制の整備のため、関係者との情報交換や必要な調整を図りながら、認定こども園への移行を促進します。また、令和8年度から全国で実施予定の「こども誰でも通園制度」に向けて、その実施体制の整備など、必要な準備を進めてまいります。
こども基本法では、家庭や子育てに夢を持ち、子育てに喜びを感じられる社会をつくることを基本理念のひとつとして挙げていますが、子育ては幸せや楽しみだけではなく、ときに不安や悩みがつきまとう場合もあります。本市では、子育て健康プラザ・マーノ内に「こども家庭センター」を設置し、子どもや妊産婦、子育て家庭などのあらゆる相談と支援を一体的に実施する体制を整えていますが、子を持つ親が子育てに伴う喜びを実感できるよう、絆る~むの職員体制の見直し、産後期におけるパパママ教室の開催、親子間の適切な関係性の構築を図るプログラムの実施などを通して、子育て世代の支援をさらに推進してまいります。
子育て世帯の経済的負担の軽減に向けた取り組みとしては、引き続き、市立小中学校などの給食材料費高騰分を市費で負担するほか、令和7年度から、子ども医療費助成の対象を高校生世代の通院・入院費用にまで拡大することに加え、インフルエンザの予防接種について、高校1・2年生世代を新たに費用助成の対象とすることで、生まれてから高校3年生世代までの切れ目のない助成を実施します。また、キッズクラブの保育料について、減免する対象世帯を見直し拡充します。
地域・経済の元気づくり
岐阜財務事務所が昨年11月に発表した県内経済情勢によれば、「岐阜県内経済は、緩やかに回復しつつある」と判断し、生産活動、雇用情勢についてそれぞれ「緩やかに回復」、「緩やかに改善」しつつあると判断していますが、市内企業の経営環境は、物価高騰、金利上昇、人手不足などの社会情勢の変化に伴い、依然として厳しい状況にあると考えます。こうした状況の中、雇用機会の創出や地域の活性化などを目的として進めてまいりました可児御嵩IC工業団地につきましては、令和4年度から開始した造成工事が本年度末で完了する予定です。5つある分譲区画のうち2区画については、進出企業が決定し、既に建設工事が進んでいる区画もございます。昨年、第2工区の2つの区画の分譲申込の受付を開始しましたが、引き続き綿密な協議・調整を図りながら、分譲を進めてまいります。
生産年齢人口の減少に対する地域産業の担い手の確保については、市内企業の魅力発信を継続して実施していくことが重要です。可児わくわくWorkプロジェクトや高校生を対象にした可児の企業魅力発見フェアといったこれまで実施してきた取り組みに加え、本年度は、小学校高学年と中学生、その保護者を対象にした「かにっこlaboバスツアー」を開始しました。100名を超える親子に参加していただき、見学やワークショップを通じて市内企業の特色や面白さについて体験いただくことができました。本市には魅力的な企業が数多く存在していますので、企業の魅力発信に繋がるこうした取り組みの展開について、製造業をはじめとした市内企業への働きかけを継続するとともに、企業が主体的に進める取り組みとも連携を図りながら、地域で育ち、地域への想いを持った人が地域で働く「地育地働」の取り組みについてさらなる促進を図ります。
地域の課題解決に向けた取り組みとしては、地域学校協働活動や地区センターの活性化などの取り組みについて、大学や企業などと締結している連携協定を適宜活用し、その専門的な知見や柔軟な発想に基づく意見も伺いながら、効果的な取り組みを検討してまいります。また、本市と株式会社良品計画とで設立した地域商社「一般社団法人カニミライブ」が、昨年11月、可児市の特産品である里芋を使った新商品「かにたろうクッキー」を発売しました。当商品の販売や販路拡大、さらなる地域ブランドの開発などを通して、今後も地域課題の解決や地域活性化に繋がる活動を期待します。
地域資源の磨き上げに繋がる取り組みとしては、可児市運動公園の再整備において、令和8年度の東ゾーン運動公園グラウンドのオープンに向けて人工芝の敷設を進めるとともに、西ゾーンについても駐車場・多目的広場の整備に向けた工事を計画的に実施してまいります。また、市内の各種スポーツイベントや全国高校野球選手権岐阜大会などにおいても使用されるカヤバスタジアムについては、夏の厳しい暑さ対策として、ベンチ裏スペースにエアコンを設置することで、クーリングルームとします。
さらに、美濃桃山陶や山城といった可児市特有の文化・歴史資源について、引き続きその価値を磨き上げていくとともに、受入環境の整備によるインバウンドを含めた観光旅客の来訪促進などを通して、文化観光の振興と地域経済の活性化の好循環を図ってまいります。なお、この施策を進めるにあたりましては、文化観光推進法に基づく拠点計画を策定し、今後の展開に向けた検討を行ってまいります。
また、本年4月から6月にかけては、ぎふワールドローズガーデンを会場のひとつとして「第42回全国都市緑化ぎふフェア」が開催されます。さらに、10月に開催される「ねんりんピック岐阜2025」では、本市は競技かるたとドッジボールの会場となっています。これらの大規模イベントには、全国から多くの方が本市を訪れますので、この機を逃すことなく、美濃桃山陶や山城といった可児市の文化・歴史資産を効果的に発信するとともに、市内各所への誘客・周遊を促進します。
まちの安全づくり
昨年1月に発生した能登半島地震では、人的被害、住家被害ともに甚大な被害が発生しました。本市を含むこの地域に目を向ければ、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から約80年が経過し、今後30年以内に南海トラフ沿いの大規模地震が発生する確率は80%程度と非常に高い状態にあります。また、昨年は、統計史上初めて11月に4つの台風が同時発生するなど、昨今の異常気象などにより自然災害の発生はますます予期できないものとなっています。こうした自然災害に対しては、これを想定した平時からの備えをしていくほかありません。災害が発生した際に機動的な対応を行うことができるよう、県域統合型GISにおいて住宅地図情報を活用した効果的な災害情報の集約や、各地の被害状況や対応状況を的確に共有するための移動系防災無線のデジタル化、内水氾濫発生時の円滑な避難を目的とした雨水出水浸水想定区域図の作成などの取り組みを実施してまいります。
災害などの突発的な事象への対応のほか、日々の暮らしにおける安全づくりも着実に進めていく必要があります。総務省が実施した令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空家総数は約900万戸となり、過去最多となりました。本市においても空家戸数は増加傾向にあります。空家を放置すると、倒壊による被害や、景観や衛生環境の悪化、不法侵入による治安の悪化など、様々な悪影響が生じるおそれがあります。空家の改修・除却費用の助成金の予算額を増額し、危険な空家の除却に向けた取り組みを進めるとともに、これと並行して、通学路への防犯カメラの設置などといった地域防犯に向けた取り組みも実施してまいります。
福祉の分野においては、障がいのある方々が適切なサービスを受けながら、地域で安心していきいきと暮らしていけるよう、安全確保に向けた障害者支援施設の移転に対して補助を行うことによりサービス提供体制の整備を図るとともに、障がい者計画に基づいて、必要な自立支援や生活支援を実施してまいります。生活に困窮している方々に対しても、包括的な相談支援などを継続して実施してまいります。また、こうした障がいや生活困窮のみならず、高齢や介護など、安心な暮らしに向けた市民の皆様の支援ニーズは様々であるとともに複雑化・複合化しています。こうした支援ニーズに一体的に対応していくため、支援関係機関が連携し、包括的に支援する体制の構築を目的として、重層的支援体制の整備を進めてまいります。
こうした取り組みに加え、子どもたちが暮らしていく未来の環境を守るための取り組みも重要です。照明のLED化、太陽光発電設備の導入やHV・EVといった次世代自動車への移行などに率先して取り組み、脱炭素社会の実現に向けた社会の意識・行動変容に繋げてまいります。
この他にも、安全で快適な交通環境の確保に向けて道路舗装に集中的に取り組むほか、公共施設等マネジメント基本計画・個別施設計画の改訂や、公共施設の計画的な改修、名鉄広見線の議論も踏まえた利用しやすい公共交通の検討など、市民の皆様が安全・安心に暮らせるまちづくりのための各種取り組みを引き続き進めてまいります。
なお、昨今、全国の河川などで有機フッ素化合物「PFAS」が相次いで検出されている問題については、市民の皆様においても不安を感じておられる方が多いと思いますが、本市の水道水を検査した結果「PFAS」は検出されませんでしたので、ご安心いただければと思います。
むすび
人口減少や少子高齢化に起因する生産年齢人口の減少により、今後の市政運営は、財政的にも人材確保の面においても、より一層厳しさが増していくことが予想されます。このような状況においても、本市が持続可能なまちであり続けるためには、まずは、人口減少そのものに対する取り組みを実施していく必要があると考えます。
これに関する取り組みとしては、国や県とも連携を図りながら、市政経営計画に定める4つの重点方針に基づいた各種事業を着実に実施していくことにより、「住みごこち」の良さという本市の魅力をさらに高め、人口減少の抑制に繋げていきたいと考えております。また、これら事業の実施にあたりましては、将来を担う子どもたちに向けた取り組みが特に重要となりますので、可児の子どもたちが可児に愛着を感じ、将来、可児で住み、可児で働くことを選択してもらえるよう、子どもたちが「可児のことをもっと好きになるような」、「可児に住んでいることに誇りを持ち、これを自慢できるような」体験事業をはじめとした子ども向けのコンテンツの展開に重点を置いて取り組んでまいります。このためには、市内外の企業・団体や市民の皆様との連携が不可欠であり、社会全体の仕掛けを構築することが必要であります。既に、「かにっこlaboバスツアー」や地域のボランティア活動への参加など、様々な取り組みが行われていますが、これらをさらに多様化して連携できるようにしてまいりたいと思います。
こうした取り組みにより人口減少そのものへの対策を図りつつも、来るべき人口減少社会を見据えた取り組みを並行して実施していくことが必要です。人口減少、少子高齢化は、行政運営の側面にも弊害をもたらします。今後、社会福祉関連分野を中心として、行政需要はさらに増加していくことが予想されていますが、これを担う地方公務員は、2040年には2割近く不足するとの推計が示されています。本市においても既に、保育士や技術職員などといった専門職員の採用申込者の減少や、早期退職、他自治体などへの転職といった状況が生じています。こうした将来の公務員の人手不足の流れは、少ない職員数で行政運営を行ってきた本市においても影響は少なくありません。また、これに加え、人口減少による納税者数の減少に伴い、市税の基幹的税目の一つである個人市民税を中心に地方税収が減少していく恐れもあります。この他にも、近年、企業においても問題となっているカスタマーハラスメントによる職員の心身の消耗や、昨年の人事院勧告により示された愛知県内市町村との地域手当の格差なども、人材の確保・定着や組織の活性化という点で、今後の市政運営への影響が懸念されます。
こうした状況の中にあっても、多様化・複雑化する行政ニーズに適切に対応しながら、安定的に行政サービスを提供していくためには、行政手続きのオンライン化や公共施設の適正化などをはじめとした効率的な行政運営、時代の変化に合わせた組織体制や働き方の見直し、民間企業などとの連携による課題解決や魅力創出にこれまで以上に取り組んでいかなければなりません。市民の皆様が今後も快適で安心な暮らしを営むことができるよう、「行かなくてもすむ市役所」をはじめとしたフロントヤード改革の推進など、これまでにない新たな取り組みにも挑戦しながら、持続可能なまちづくりに向けて取り組んでまいります。
市民の皆様、並びに議員各位におかれましては、今後の市政運営と本市発展のために格段のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
添付ファイル
令和7年度施政方針(pdf 454KB)