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令和6年度 施政方針

更新日:2024年2月27日

令和6年度 施政方針

 令和6年度当初予算案をはじめとする、諸議案のご審議をお願いするにあたり、私の市政運営に関する所信を申し述べ、市民の皆様、並びに議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。

 

令和6年度の基本方針

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが昨年5月8日に「5類」に引き下げられてから、間もなく10カ月となります。内閣府が1月に公表した月例経済報告では「景気は、このところ一部に足踏みもみられるが、緩やかに回復している」とされており、経済産業省中部経済産業局が同月発表した管内総合経済動向でも「最近の経済動向は持ち直している」との判断が示されるなど、我が国ではコロナ禍の3年間を乗り越え、社会経済活動の正常化が徐々に進んでいます。
 しかしながら、原材料価格の上昇や為替相場の円安を受けて、食料品などの値上がりが続いており、家計や企業活動への重い負担となっています。中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動などによる影響も懸念されるなど、依然として先行きが不透明な状況が続いています。また、企業においては、物価の上昇に加えて人口減少や少子高齢化による人手不足も深刻な状況となっており、経営に大きな影響を及ぼしています。
 昨年12月に発表された国の将来推計人口によれば、2050年までに東京都を除く46道府県で人口減少が進み、岐阜県内ではすべての市町村で人口が減少すると予測されています。本市の2050年の推計人口は、2020年と比較して約16%減の83,832人となっています。また、本市の年齢別人口の推計では、0歳から14歳までの年少人口の割合が、2020年の13.0%から、2050年には10.2%まで下がる一方で、65歳以上の老年人口の割合は28.1%から38.3%に増えるなど、時間の経過とともに人口減少と少子高齢化が同時並行的に進むことが予想されます。
 人口減少と少子高齢化の進行は、本市に限らず全国的な傾向であり、今後、税収の減少や地域経済の縮小により、生活基盤の維持が困難になるおそれがあります。国においては、人口減少に歯止めをかけるため、異次元の少子化対策として「こども大綱」や「こども未来戦略」を策定するなど、様々な取り組みを進めています。本市でも必要な対策を講じているところですが、今後も人口の減少傾向は避けられず、そのことを前提としたうえで、持続可能な自治体運営を確保していかなければなりません。
 本市の財政はこれまで、類似団体との比較や健全化判断比率などから見ると、健全な状態を維持してきましたが、高齢化などに伴う社会保障費の増加や、物価上昇による光熱水費などの増加、昭和40年代からの人口急増期に集中的に整備した公共施設の維持更新、可茂衛生施設利用組合による新たなごみ処理施設建設に係る負担など、今後も多額の経費が必要となります。特に物価上昇に伴う人件費や委託料の増加、そして子ども・子育て政策の強化などにより、必要となる経費の増加傾向は来年度以降も当面の間続くものと予想されます。市民の安全安心な暮らしに欠かせない重要なライフラインである上下水道についても、人口減少に伴い、上下水道料金収入が減少していくことが予測される一方で、施設の耐震化や老朽化対応に伴う更新工事など、事業を健全に維持するためには引き続き多額の投資が必要です。加えて、水道事業は水道水の全量を県営水道から受水し、下水道事業は汚水の大部分を岐阜県各務原浄化センターで浄化しているため、物価上昇により県に支払う受水費や下水道の維持管理負担金の単価の値上げがあれば、上下水道事業の支出が増大して経営を圧迫することにもなり、今後の経営状況の見通しは非常に厳しいものになっていくと考えております。
 こうした状況の中で、今後も市税収入の大幅な増加は見込めず、実施する事業のさらなる選択と集中が必要となります。将来にわたって健全な財政運営を維持しつつ、次世代に大きな負担をかけないためにも、基金による将来負担への備えや、これまで以上に中期的な収支見通しを踏まえた計画的な財政運営を行っていかなければなりません。
 令和6年度からは新しい市政経営計画がスタートします。令和9年度までの4年間を計画期間とし、自治体としての持続可能性を確保しつつ様々な課題に対応していくことで、市民の皆様に暮らしやすさを実感していただけるよう、「住みごこち一番・可児~すこやかに、にぎやかに、おだやかに暮らせるまち~」の実現に向けて、「高齢者の安気づくり」「子どもの笑顔と子育て世代の安心づくり」「地域・経済の元気づくり」「まちの安全づくり」の4項目を重点方針として取り組んでまいります。
 その初年度となる令和6年度の可児市一般会計予算案は、前年度比31億1千万円、9.8%増の349億4千万円としました。物価上昇や人件費の増加など経常的な経費の増加、公共施設やインフラの改修による投資的経費の増加、そして子育て支援に関する取り組みの強化に加えて、国の追加的な物価高騰対策などが主な増加要因となっています。また、特別会計及び企業会計を合わせた予算総額は、前年度比10億6,430万円、1.7%増の628億4,860万円となります。

 

高齢者の安気づくり

 本市の高齢化率は、昨年10月現在で28.7%となっています。特に高齢者人口のうち医療や介護のリスクを抱えやすい75歳以上の後期高齢者人口の増加が著しく、令和5年には高齢者人口の53.7%を占めています。さらに、高齢化の進行に伴って高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯も増加しています。
 このように超高齢化が進む中で、高齢者を孤立させないため、必要な情報提供や気軽に相談できる仕組み「高齢者孤立防止事業」を継続していくとともに、高齢者サロンや生活支援など、地域における高齢者支え合い活動を支援してまいります。
 また、高齢者が住み慣れた地域で、生きがいを持って自立した生活を継続していく上では、通院や買い物などの移動・外出が欠かせませんが、令和5年度に行った市民アンケートなどを通じて、「外出が不便」「公共交通の利用が難しい」といったご意見をお聞きしています。こうしたご意見を踏まえ、移動や外出に関する不安を解消するため、高齢者が安心して使える移動手段の確保策として、地域住民の移動支援サービスを行っている地域団体に対して車両を無償貸与し、その活動を支援します。
 高齢化の進行、特に後期高齢者の割合が今後も増加していくことに伴い、認知症や脳血管疾患などで介護が必要となる人も増えていきます。健康寿命を延ばし、要介護状態になることを防ぐために、高齢期を迎える前から生活習慣や健康づくりに気を配ったり、様々な地域活動に参加して人とのつながりを保ったりすることが、ますます重要となります。令和5年度から高齢者の保健事業と介護予防を関係機関が協力して一体的に実施することで、後期高齢者の健康維持やフレイル予防を図る取り組みを開始しています。令和6年度からは口腔フレイル予防を新たに実施するなど、さらなる充実を図り、高齢者ができる限り介護が必要な状態にならず、健康で自立した生活ができる期間を延ばすとともに、医療費や介護給付費など社会保障費の増加の抑制につなげます。
 労働人口の減少などを背景として、介護業界は深刻な人手不足となっています。介護職員の確保や定着を図り、介護保険サービスを安定的に提供できる体制を整えるため、介護職員初任者研修の受講費用や、事業所が外国人介護人材を受け入れる際に必要となる費用を助成します。

 

子どもの笑顔と子育て世代の安心づくり

 令和5年4月に「こども基本法」が施行され、すべての子どもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現を目指し、社会全体として子どもや若者に関する取り組みを進めていくこととなりました。本市においても、令和5年度中に子育て支援策に関する全庁的な検討を行い、必要性が高い取り組みについては、可能なものから令和6年度当初予算案に事業費を計上しました。これまで取り組んできた「マイナス10カ月からの子育て」に引き続き力を注ぎ、子育て世代の安心づくりを進めるとともに、可児市の子どもたちが笑顔で健やかに成長できるよう、地域全体で支え合うことができる体制をさらに強化してまいります。また、少子化が進む背景には、経済的な不安定さや仕事と子育ての両立の難しさなど、様々な要因が複雑に絡み合っています。そうした中で、核家族化や地域コミュニティの希薄化などによる子育ての孤立感や負担感を解消するための支援も引き続き進めてまいります。
 子どもたちの健やかな成長を支援するため、インフルエンザウイルスへの感染と重症化の予防対策として、重症化率が高いとされる未就学年齢を含む1歳から中学3年生までを対象に、インフルエンザ予防接種費用を助成します。また、進学や就職など人生の大切な節目を迎える高校3年生に相当する年齢の方への助成も継続します。
 個別施設計画に基づく学校校舎の長寿命化改修として、桜ケ丘小学校校舎の大規模改造工事を実施します。また、令和6年度から令和8年度までの3カ年で、すべての小中学校のトイレの洋式化を進め、学校生活における環境改善を図ります。令和6年度は今渡南、今渡北、春里の小学校3校と、蘇南、中部の中学校2校で工事を行います。
 障がいや発達に心配がある子など、支援を必要とする子どもたちのために、私立保育園が加配保育士を配置する際の人件費の補助を拡充することで、保育環境の充実を図ります。小中学校においても、看護師の資格を有する医療的ケア児サポーターを新たに配置したり、スクールソーシャルワーカーの派遣回数を増やしたりすることで、子ども一人一人に応じた学習環境の整備などを進めます。
 外国籍児童生徒への学習支援環境についても、さらに充実させるため、小中学校の通訳サポーターと、ばら教室KANIの指導助手をそれぞれ増員します。
 増加する不登校や登校渋りの傾向にある児童生徒に寄り添い、未然防止や初期対応、自立支援と教育支援が十分にできるような体制の整備を進めます。学校に行きたくても行けない児童生徒のために開設しているスマイリングルームについて、現在の総合会館内に加えて、老人福祉センター可児川苑内に増設し、子どもたちを支援する「つながりサポーター」なども併せて増員するなど体制を強化することで、それぞれの特性に応じた学校以外での居場所づくりを進めます。また、不登校児童生徒の保護者への支援として、昨年9月に子育て支援課内に開設した不登校支援室での相談支援を継続するとともに、講演会や講座の開催などを通じて、保護者同士が交流できる機会をつくります。
 子育て世代の安心づくりとして、子育て健康プラザ・マーノ内に、従来の子育て世代包括支援センター、子ども家庭総合支援拠点の機能を維持したうえで、すべての妊産婦、子育て世帯、子どもへ一体的に相談支援を行う機能を有する「こども家庭センター」を設置し、妊娠期からの切れ目のない支援をさらに充実させます。また、家事や育児などに不安や負担を抱える子育て家庭や妊産婦がいる家庭を訪問し、家事や育児を支援する事業を新たに実施します。
 子育ての援助を受けたい人と子育てのお手伝いをしたい人をつなぐファミリー・サポート・センター事業を、現在の市直営から外部委託に変更することで、利用申し込みの受付時間を拡充し、土日も申し込みができるようにするなど、より利用しやすくします。
 さらに、現在実施している「住宅新築リフォーム助成事業」を拡充し、子どもがいる世帯に助成金を上乗せすることにより、従来の目的である地域経済の振興及び活性化と併せて、子育て世代の住宅取得支援と定住移住の促進を図ります。
 なお、現在中学生までを対象としている「こども医療費助成」については、令和7年度から対象を高校生世代まで拡大できるよう、令和6年度中に条例の改正やシステム改修など、必要な準備を進めてまいりたいと考えております。

 

地域・経済の元気づくり

 中部経済産業局が1月に発表した管内総合経済動向によると、設備投資は全産業において前年度を上回る計画となっており、生産も緩やかに持ち直しているとされていますが、エネルギー価格の高騰や為替変動の動向など、先行きが不透明な状況が続いています。人手不足も深刻で、可児市の主要産業である製造業を中心に大変厳しい状況であることから、引き続き市内企業への活動支援や、地域経済の活性化に取り組みます。
 可児御嵩インターチェンジ工業団地については、令和5年度に造成工事が完了する第1工区の分譲に向けて企業との協議を進めており、市民の皆様に良い知らせをお伝えできればと考えております。また、令和6年度には第2工区で引き続き造成工事を進めるとともに、分譲募集を行います。
 地域産業の担い手となる人材を育成するため、可児わくわくWorkプロジェクトや可児の企業魅力発見フェアを継続実施するとともに、親子で市内の企業を見学し、ワークショップなどの体験を通じて、子どもたちやその保護者に市内企業の魅力や、地元で働くことのメリットを知っていただく「子ども・企業マッチング事業」を実施します。
 コロナ禍を経て、新しい働き方として普及している副業・兼業人材を活用し、市内中小企業の販路拡大や新商品開発、広報戦略などを支援する「副業人材活用支援事業」を開始します。
 可児市の地域資源を生かした取り組みとしては、可児市運動公園を地域の防災拠点となる防災公園として、またスポーツはもとよりレクリエーションなど様々な機能を持つ総合的なスポーツ・健康づくり公園として、本市の新たな魅力の一つとなるよう整備を進めます。令和8年度の完成を目指し、令和6年度は運動公園グラウンドに当たる東ゾーンの整備工事を実施します。
 また、令和6年度には国際陶磁器フェスティバル美濃が、そして岐阜県においても国民文化祭と全国高等学校総合文化祭、さらに令和7年度には全国都市緑化フェアと全国健康福祉祭が開催されます。これらの全国から多くの人が訪れる大規模イベントを本市の魅力発信の好機と捉え、美濃桃山陶や山城など、本市が誇る歴史資産の価値や文化的な意味を市内外に発信するとともに、これら大規模イベントの来場者を市内各所に誘客するための取り組みを進めます。
 公民連携の一環として、昨年6月に包括連携協定を結んだ株式会社良品計画と共同で地域商社を立ち上げ、可児市の特産品のブランド化を推進する事業の開始を目指します。

 

まちの安全づくり

 近年、異常気象などによる自然災害が全国各地で多発しています。今年に入ってからは能登半島地震が発生し、建物の倒壊などで多くの方が犠牲になられたり、厳しい寒さの中で避難生活を余儀なくされたりしています。あらためて、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。被災地が一日も早く復興し、平穏な生活を取り戻すことができるようお祈りいたします。本市でも、県など関係機関と連携しながら被災地支援を継続していくとともに、支援活動を通じて得られる経験やそれを踏まえた知見などを生かして、万が一の際に被害を最小限に抑えるための備えを引き続き進めてまいります。
 集中豪雨などによる急傾斜地の崩壊や水害を防ぐため、急傾斜地崩壊対策事業や河川改修工事などを着実に進めていきます。また、浸水被害を防ぐための雨水排水路整備や、災害時にも安定的に水道水を供給することを目指した水道施設の耐震化など、市民の安全安心を守るために必要なインフラの整備を計画的に進めます。
 老朽化した防災行政無線についても、災害時の情報伝達手段として安定的に利用できるようデジタル化に向けた工事を進めます。さらに、指定避難所の標識を、外国籍市民も含めて誰もが分かりやすいものにするため、外国語表記やピクトグラム付きのものに更新します。
 災害への備えだけでなく、市民の身近な暮らしの安全安心を確保するため、自治会などに交付する防犯灯設置補助金を拡充するとともに、新たに防犯カメラ設置補助金制度を設けます。また、公園や駅周辺など、公共性や必要性の高い場所に防犯カメラを設置します。
 障がいのある方やそのご家族を支える自立支援や生活支援、生活に困窮している方への総合的な支援、外国籍市民の皆様が地域で生活していく上で必要な支援などについても、引き続き実施してまいります。

 

むすび

 今後も人口減少、少子高齢化は不可避であり、そのことを前提としつつ、いかに地域の活力を維持していくかが、これからのまちづくりの重要な課題であります。そして、それを解決するための鍵は、かねてから申し上げている通り、可児市ならではの住みごこちの良さをどのように磨き上げ、それを市民の皆様にどう実感していただき、そして、そのことをいかに市内外に発信していくかという点であり、特に若い世代に可児市に住み続け、生活基盤をつくっていきたいと思っていただけるような、暮らしやすさという可児市の魅力を伸ばしていくことが必要であります。
 そのためにも、可児市の住みごこちの良さを、日々の暮らしの中で体感できるような仕組みづくりに取り組んでいきたいと考えております。その皮切りとして、昨年11月にはカニミライブ図書館を開館いたしました。従来の図書館のイメージとは異なり、買い物のついでに本を手に取っていただくなど、本が日常生活の中に溶け込み、暮らしの知識やヒントを得ることができる環境の中で、可児市で暮らす心地良さを感じていただければと思います。
 また、子どもたちの未来に暮らしやすい環境を引き継いでいくため、令和5年7月に策定した可児市ゼロカーボンシティ推進計画に基づき、市民、事業者の皆様と連携しながら、再生可能エネルギー導入の推進や循環型社会の形成などの地球温暖化対策を着実に進めてまいります。
 一方で、企業と同じく行政分野でも公務員の人手が不足しており、将来的には行政サービスの提供や行政機能の維持にも支障をきたすおそれがあります。そのため、職員数が現在より減少しても行政サービスの維持・向上を図ることができるよう、あらゆる分野でデジタル技術の活用による業務の最適化や、時代の変化に合わせた組織・業務体制の見直し、公民連携の推進など、将来を見据えた取り組みを進めてまいります。
 新しい市政経営計画のもとで、気持ちを新たに「住みごこち一番・可児~すこやかに、にぎやかに、おだやかに暮らせるまち~」の実現に全力を尽くしてまいります。今後の市政運営と本市発展のために、市民の皆様、並びに議員各位の一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

添付ファイル

 令和6年度施政方針(pdf 347KB)