本文にジャンプします

令和5年度 施政方針

更新日:2023年2月28日

令和5年度 施政方針

 令和5年度当初予算案をはじめとする、諸議案のご審議をお願いするにあたり、私の市政運営に関する所信を申し述べ、市民の皆様、並びに議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。

 

令和5年度の基本方針

 昨年11月に市長として4期目がスタートいたしました。これまでの3期12年の市政運営では、「住みごこち一番・可児」の実現を目指し、「高齢者の安気づくり」「子育て世代の安心づくり」「地域・経済の元気づくり」「まちの安全づくり」という4つの重点方針に基づいて様々な施策に取り組んでまいりました。引き続き「住みごこち一番・可児」をキーワードに、4つの重点方針に基づくまちづくりに全力を傾注してまいります。
 さて、政府は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けについて、5月8日から季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる方針を決定しました。このことに伴い、医療費の公費負担やワクチン接種のあり方など、市民の皆様にも大きな影響が生じることが予想されます。今後も国の動向を注視しながら、必要な情報を随時お知らせしてまいります。
 また、長引く物価高騰やエネルギー危機などによる様々な影響も、市民生活や事業活動への重い負担となっています。現在と同じような危機的状況として、かつてのリーマンショックを振り返ってみますと、景気後退による市内事業所数の減少や、製造業を支える人材でもある外国籍市民を中心とした転出超過が続いたことによる人口減少など、本市においても非常に大きな影響がありました。長期的には、本市の人口は日本全国と同様に、今後も減少が進むものと予想されます。さらに、厚生労働省の人口動態統計によれば、昨年の年間出生数が統計開始以来、初めて80万人を割り込む見通しとなっており、少子化は我が国全体の社会経済の根幹を揺るがす危機的状況にあると言えます。市としても、積極的な企業誘致や子育て支援の充実など、少子高齢化や人口減少への対応策を講じていかなければなりません。
 かつての可児市は、増え続ける人口に対応するため、ハード整備を中心としたまちづくりを進めてきましたが、私の市長就任後は、それまで着手できていなかった、市の様々な資源の磨き上げとその魅力の発信に力を注いでまいりました。美濃桃山陶の聖地や山城、文化創造センター・アーラ、大河ドラマと連携した明智光秀博覧会の開催などを通じて、可児市が誇る歴史・文化資産を市民の皆様にあらためて認識していただくことができたのではないかと思います。子育て支援についても、「マイナス10カ月からの子育て」をキャッチフレーズとして、その拠点となる子育て健康プラザ・マーノの開館、保健師の担当制導入による妊娠期を中心とした相談支援体制の整備、放課後児童クラブの対象児童の年齢拡大や長期休暇に対応するキッズクラブの開設、全国初となる子どものいじめの防止に関する条例の制定と、それに基づくいじめ防止専門委員会の設置などを進めてまいりました。市外からの移住を促進することも重要ですが、可児市民や可児市で生まれ育った子どもたちが、愛着と誇りを持って可児市に住み続けていただくことが最も大切であると考えております。そのために、これからも可児市の新たな魅力づくりに取り組んでまいる所存です。
 令和5年度は、(仮称)可児御嵩インターチェンジ工業団地の開発や可児市運動公園の再整備、ごみ処理施設ささゆりクリーンパークの移設候補地の選定など、大変重要な案件が控えています。
 以上のような状況を踏まえ、ウィズコロナ、少子高齢化や人口減少の進行などに引き続き危機感を持ちつつ、市の将来のための事業には積極的に財源を配分するなど、今後に備えて規律ある予算とするべく編成作業を進めてまいりました。
 その結果、令和5年度の可児市一般会計予算案は、前年度比19億8,000万円、6.6%増の318億3,000万円としました。特別会計及び企業会計を合わせた予算総額は、前年度比27億7,150万円、4.7%増の617億8,430万円となります。

 

高齢者の安気づくり

 高齢化の進行などにより社会保障費が増加を続けるなかで、しっかりと財源を確保し、福祉サービスを低下させないようにしなければなりません。さらに、コロナ禍の影響による外出控えや地域行事の開催自粛などの影響を受け、高齢者の健康維持や社会参加の機会確保が喫緊の課題となっています。
 高齢者を孤立させないための必要な情報提供や気軽に相談できる仕組み「高齢者孤立防止事業」を継続していくとともに、高齢者サロンや生活支援など、地域における高齢者支え合い活動を支援してまいります。また、まちかど運動教室の開催などを通じて、高齢者の健康維持をサポートします。
 認知症患者は年々増加しており、認知症高齢者やその家族が安心して暮らせる環境づくりが求められています。デジタル技術を活用した新しいサービスとして令和4年度から開始しました認知症高齢者等見守りシール事業を、令和5年度も継続します。また、認知症の方が日常生活における偶然の事故によって、他人に怪我を負わせたり、他人の物を壊したりすることなどにより、法律上の損害賠償責任を負担することとなった場合に備え、見守りシール事業利用者のうち認知症の方を対象として、新たに個人賠償責任保険への加入を支援します。認知症予防教室や認知症サポーター養成講座の開催など、認知症に関する知識を伝え、その予防や見守り支援を促進するための取り組みも引き続き行ってまいります。
 住み慣れた地域で、いつでも安心して必要な介護サービスの提供を受けられるよう、定期巡回・随時対応型訪問看護事業所の公募を行い、介護サービスのさらなる充実も図ります。

 

子育て世代の安心づくり

 このところ不登校児童生徒が増加傾向にあり、その要因も複雑化・多様化しています。そうした子どもたちの自立を支援するため、教育委員会の取り組みとして、スマイリングルームに新たに「つながりサポーター」を配置し、タブレットの活用や家庭訪問などを通じて、不登校児童生徒やその保護者とのつながりを確保していきます。その一環として、インターネット上に構築された仮想空間であるメタバースを活用した不登校支援プログラムの新規導入も進めてまいります。
 市長部局としても、教育委員会とはまた違った視点で子どもたちや保護者が抱える課題の解決を支援するため、これまでも取り組んできたいじめの防止に加え、不登校になっても社会とつながり、自立できるよう、市民団体メンバーなどで構成する「(仮称)不登校支援検討委員会」を組織し、不登校の子どもたちの学校以外での居場所づくりや、保護者への支援機関・団体に関する情報提供などの仕組みについて検討します。
 医療的ケアなど支援を必要とする子どものために、瀬田幼稚園に看護師を増員するなど受け入れ体制を強化するほか、私立保育園への補助金の充実を図ります。長引く新型コロナウイルス感染症の影響を受けた子どもたちの心のケアのため、スクールカウンセラーを学校へ派遣する回数も拡充します。
 また、発達障がいなどにより集団生活に馴染めない幼児のために、保育士の配置などの面で限界はあるものの、できる限り受け入れ可能な人数を増やせるよう現在検討を進めております。
 小中学校では、これまで整備を進めてきたICT環境のもとで、デジタル教科書の更新などによるタブレットを活用した学習機会の拡充を図ります。
 個別施設計画に基づく学校校舎の長寿命化対策としては、桜ケ丘小学校校舎長寿命化改良工事の実施設計を行います。また、広陵中学校屋内運動場屋根・外壁改修工事、中部中学校屋内運動場屋根防水改修工事を実施し、学習環境の改善を図ります。トイレの洋式化についても、校舎長寿命化改良工事のなかで対応予定である桜ケ丘小学校のほか、小学校3校と中学校2校の計5校で実施設計に着手し、すべての市立小中学校での早期完了を目指して計画的に工事を進めてまいります。
 企業との連携事業として令和4年度から開始した子どもの見守り事業につきましては、モデル校として導入した小学校2校の状況を踏まえたうえで、今後市内の全ての小学校への計画的な展開を図ります。
 令和4年度から国が開始した「出産・子育て応援交付金事業」による伴走型相談支援と経済的支援を継続実施し、妊娠届出時から全ての妊婦・子育て家庭に寄り添い、情報発信や相談を通じて必要な支援につなげるなど、本市が掲げる「マイナス10カ月から つなぐ まなぶ かかわる 子育て」 をより一層推進してまいります。
 なお、国は「従来とは次元の異なる少子化対策の実現」のため、6月に策定される経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示するとしています。これを受け、全国市長会では子どもを産み、育てる際の一番の問題は貧困であり、経済面を含めて環境整備が進められなければ解決されないことや、その際に国と地方が十分に連携をしながら子育て施策を実施したいと考えていること、また、自治体間においても格差が生じることのないよう、十分な財源を確保することなどを、国に意見として申し入れました。今後、国が示す方針などを踏まえて、本市としても必要な対策や財源確保など、自治体としての責務を果たしてまいります。何よりも大切なのは、子どもたちが安全かつ安心して、楽しく学び、成長することができる環境を整え、可児市への愛着と誇りを育んでいくことであると考えております。そのために、これまでも様々な施策に取り組んできましたが、子どもたちにとって、より一層魅力あるまちとなるよう、令和5年度には庁内に検討組織を立ち上げ、今後のさらなる取り組みについて検討を進めてまいります。

 

地域・経済の元気づくり

 先ほども申し上げました通り、物価高騰やエネルギー危機などの影響で、本市の主要産業である製造業を中心に、今後も大変厳しい状況が続くことが予想されますが、歳入の確保による持続可能な市政運営の推進のため、市政経営計画の最重点施策として位置付けている企業誘致につきましては、(仮称)可児御嵩インターチェンジ工業団地の第2工区の造成工事を開始するとともに、分譲に向けた公募を終え、関心を持っていただいた複数の企業との間で、個別に本格的な交渉を進めてまいります。今後とも企業の誘致を積極的に進め、新たな雇用の場を創出し、地域経済を活性化することで、定住・移住を促進するとともに、将来的に安定した税収の確保を目指します。なお、アクセス向上のための東海環状自動車道の早期全線4車線化についても、沿線自治体と連携しながら国への要望活動を継続的に行ってまいります。
 可児わくわくWorkプロジェクトを引き続き推進するとともに、様々な催しにおいて、小中学生や幼児にも市内企業の魅力に触れて関心を持ってもらえるような工夫を凝らすことにより、将来の地域産業の担い手となる人材の育成につなげます。
 市民スポーツの拠点である可児市運動公園については、防災拠点としての機能強化を図るとともに、サッカー、野球、ホッケーなどの競技場として、また健康づくりや多世代交流の場として多くの人が集い、本市の新たな魅力の一つとなるよう再整備事業に本格的に着手いたします。
 地域の支え合い活動や課題解決への取り組みを支援する新たな仕組みとして、自治連合会地域づくり交付金、自治会活動推進交付金の制度を開始します。

 

まちの安全づくり

 近年、異常気象などによる自然災害が全国各地で多発しており、本市でも万が一の際に被害を最小限に抑えるための備えを、引き続き進めていかなければなりません。
 集中豪雨などによる急傾斜地の崩壊や土砂災害を防ぐため、古瀬地区の急傾斜地崩壊対策事業や室原川の改修詳細設計などを着実に進めてまいります。
 また、浸水被害を防ぐための雨水排水対策や、災害時にも安定的に水道水を供給することを目指した水道管の耐震化など、市民の安全安心な暮らしに欠かせないインフラの整備を計画的に進めます。
 現在の異常気象の要因の一つと考えられている地球温暖化を食い止めるためには、温室効果ガスの排出を減らしていく努力が必要です。本市は昨年7月に、2050年までに二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ宣言」をしました。現在策定を進めている「可児市ゼロカーボンシティ推進計画」に基づき、市民、事業者、他自治体などと連携し、地球温暖化防止に向けた取り組みをより一層進めていかなければなりません。民間企業と連携したペットボトルの「ボトルtoボトル」リサイクルや、令和4年度から開始した太陽光発電設備の設置に対する補助制度を継続するほか、道路照明灯や地区センター、小学校の校舎・屋内運動場など公共施設の照明をLED化し、長寿命化とあわせて省エネによる脱炭素化を進めます。なお、道路照明灯や防犯灯については、設置に関する基本的な考え方を令和5年度中に整理したいと考えております。
 地域医療の面では、救急要請件数の増加や医師不足などの課題に対応し、救急医療体制を確保するため、可児とうのう病院、東可児病院、藤掛病院及び可茂地域の三次医療機関的な役割を担う中部国際医療センターを支援する補助制度を創設します。
 また、障がいのある方やその家族の皆様を支える自立支援や生活支援、生活困窮者への総合的な支援を引き続き実施していきます。
 稼働期限まで残すところ16年となった「ささゆりクリーンパーク」の後継施設をどうするかも、可児市のみならず可茂地域の住民生活に関わる重要課題です。令和5年度中には、地域住民の理解を得て、市内で後継施設の建設候補地の目途をつけたいと考えております。

 

むすび

 昭和40年代後半から名古屋市のベッドタウンとして右肩上がりで人口が増加し、若く元気なまちと言われてきた本市でも、少子高齢化が進むとともに人口が減少に転じ、新たな局面を迎えております。こうした傾向は今後も続くものと考えますが、その進行を少しでも和らげるためにも、可児市ならではの住みやすさをどう磨き上げ、それをどう伝えて、どう実感していただくかが重要であります。さらに今後は、特に若い世代に可児市に住み続け、生活基盤をつくっていきたいと思っていただけるような新しいまちの魅力をつくることが必要であると考えております。
 そうした魅力づくりを進めるためには、行政だけの取り組みでは限界があります。そこで令和4年度は、民間企業と連携したペットボトルの「ボトルtoボトル」リサイクルや子どもの見守り事業を開始し、企業側からも本市との連携に良い反応をいただいております。今年1月から新たに「公民連携ワンストップ対話窓口」を設置し、市との連携に関する民間事業者や市民団体などからの提案や相談を一元的に受け付ける体制を整えました。令和5年度の組織機構再編では、こうした体制をさらに強化し、民間事業者などからのユニークな発想やアイデアによる提案を幅広く募集するとともに、密度の濃い対話を通じて、公民連携による地域課題の解決や、まちの活性化を推進することにより、新たな市の魅力づくりにチャレンジいたします。現在すでに民間企業と連携協議を進めているものもあり、できる限り早く皆様にお知らせできるよう準備したいと考えております。
 また、引き続きデジタルトランスフォーメーションを推進するため、令和5年度には、キャッシュレス端末や学校開放施設へのスマートキーを導入するほか、AI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった新しいデジタル技術の活用により、市民の利便性向上や業務の効率化を図ります。
 可児市の強みである住みごこちの良さをさらにレベルアップさせるために、企業、各種団体などとの連携や、新しいデジタル技術を活用した市民サービスの向上など、新たな魅力づくりをより一層推進してまいります。
 今後の市政運営と本市発展のために、市民の皆様、並びに議員各位の一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

添付ファイル

令和5年度施政方針(pdf 458KB)